グッと身近に来る日本史

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「黒船来航」の本質をさらに深読みしてみる 『日本1852』の世界③

 前回は黒船来航についての米国側の戦略について、考えてみましたが、今回は日本側から見た黒船来航の意味とは何だったのか、その本質を深読みしてみましょう。

 

 『日本1852』では、米国うんぬんとは関係なく、地理、歴史、宗教、政体、植物、国民性など日本を様々な角度から紹介しています。

 

 

 それぞれ読んでいただければ、おもしろいのですが、ここでは、とくに鉱物資源に関する記述について見ていくことにします。

 

 一七世紀のスペイン人メンドーサ(1578-1651)は日本の鉱物資源について次のように述べている。

「この島々には驚くほど金銀が豊富である。その信憑性が疑われるほどである。皇帝の住む江戸。ここには多くの領主も住んでいるのだが、まさに金で溢れている」

 描写がより慎重でかつ正確なケンペルもこう述べる。

「この国の鉱物資源はどの国よりも豊かである。多くの鉱物資源の中でもとりわけ豊富なのが、金、銀そして銅である」

 

 まさに黄金の国、ジパング伝説のような記述です。ただ、現代に生きる我々から見れば、昔は良かったなあ、という話です。

 

 また一方で、次のような記述も見られます。

 

 石炭は蒸気船にはなくてはならないものである。石炭こそが世界を一つに繋ぐエネルギーであり、アメリカはこの資源に強い関心を示している。現在計画されている日本遠征(ペリー提督の派遣、※筆者注)も、日本での石炭購入の許可を日本の皇帝から得ることだとはっきり言っている。

 

  米国が、金銀もさることながら、石炭に異常な関心を示していることがわかります。理由は明示されているとおり、蒸気船になくてはならないものだからでしょう。

 

 蒸気船、言い換えると、蒸気機関を動力源とした船ですが、これは産業革命の賜物とも言えるべきものです。

 

 英国に始まった産業革命は、アカデミックの世界ではいつ、どこが起源かなど細かな議論があるようですが、個人的には、蒸気機関の発明による動力機関の革命的刷新こそが、肝だと思っています。

 

 ジェームズ・ワットによって18世紀に蒸気機関が発明されて後、19世紀になって、蒸気機関は順次、各方面で実用化されていきます。とくに世界史的には船の動力として採用されたことが大きいでしょう(=蒸気船の登場)。これが19世紀の前半に起きます。

 

 米国の太平洋航路開設構想も、その前提として、蒸気船が開発されたことがあります。たとえ米国が太平洋岸に進出してきたとしても、帆船の時代ではビジネスベースで考えられる話ではありませんでした。

 

  と、考えていけば、ペリーの来航とは、いよいよ日本に世界的な産業革命の波が到達したことを意味していると言えます。これこそがペリー来航の本質中の本質だと思います。

  

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産業革命に伴う蒸気機関の船への採用で、世界の海がひとつになった(photo by PAKUTASO)